税理士法人ソラノ

若手

石黒 拓海

「分からない」から始まった。
農業経営者に頼られる存在になるまで

なぜ、実家の酪農を離れて「会社員」になろうと思ったのですか?

大学を卒業してから3年間、幕別町にある実家で酪農をしていました。
もともと大学では理学療法士になるための勉強をしていて、資格も取得しています。なので、最初から農業や税務の仕事を目指していたわけではないんです。
卒業後に実家へ戻ったのも、酪農が嫌だったから外に出た、ということではありません。実際に働いてみて、農業の面白さも感じていました。
ただ、農業をしていると、一人で黙々と作業する時間も多いんですよね。次第に「一度は外の世界も経験した方がいいんじゃないか」「一般的な会社員として働く経験もしておきたい」と思うようになりました。
そして、仕事を探す中で興味を持ったのが、経営や会計の分野です。
実家で酪農をしている時から、決算書を見たり、経営について考えたりすることが意外と面白くて。税務や経理、会計に関わる会社をいくつか見ていく中で、自分自身の農業経験とも一番つながっていると感じたのが、この仕事でした。
とはいえ、税務について専門的に学んできたわけではありません。
「何もない状態で応募するのもな」と思い、入社前には簿記の勉強をして資格を取得しました。
理学療法士を学び、実家で酪農をして、そこから税務の世界へ。振り返ってみると、かなり違うところから来たなと思います(笑)。

社会人経験も税務知識もほとんどない中で、不安はありませんでしたか?

かなりありました。
私の場合、新卒で会社に入ったわけではありません。大学卒業後の3年間は実家で働いていたので、同期と比べると「社会に出るのが3年遅れている」という感覚がありました。
税務の知識以前に、一般的な会社員としての振る舞いも分からない。
名刺交換をどうするのか。お客様とどう話せばいいのか。本当に、そこからのスタートでした。
入社後は最初の1カ月ほど本社で研修を受け、その後は実務を通して覚えていきました。先輩の仕事を見て、分からないところを聞いて、自分でも調べる。そして、実際にやってみる。
比較的早い段階からお客様と接する機会もありました。
もちろん、最初からうまくできたわけではありません。
特に覚えているのは、お客様に何を聞けばいいのかすら分からなかった頃のことです。自分の中で話が整理できていないまま質問してしまい、同じようなことを何度も聞いてしまったことがありました。
結果的に、お客様から「何が言いたいんだ」とお叱りを受けたこともあります。
自分が分かっていないからといって、そのままお客様に何度も聞けば、お客様にとってはストレスになります。
そこからは、「どう聞けば相手に負担をかけないか」「どういう言葉なら伝わるのか」を以前より考えるようになりました。
今振り返ると、あの経験も大きかったと思います。

入社4年目。自分の中で一番変わったことは何ですか?

一番は、税務について「知っている」だけではなく「人に説明できる」ようになってきたことだと思います。
私たちの仕事は、制度や仕組みを自分が理解して終わりではありません。
それをお客様に説明して、理解してもらうところまでが仕事です。
自分では分かったつもりでも、いざ人に説明しようとすると言葉が出てこないことってあるじゃないですか。説明できないということは、まだ自分の理解も十分ではないということだと思っています。
3年間仕事をする中で、少しずつそこまで理解を深められるようになってきた感覚があります。
現在は、法人のお客様が約30件、個人のお客様も約30件。合わせて60件ほどを担当しています。
札幌を拠点に、内勤の日もあれば、道内各地のお客様のもとへ伺う日もあります。
外回りの日は、朝早めに出発して、お客様のところで2時間ほどお話をして、1日に3〜4件ほど回ることもあります。
移動は多いですが、それぞれの地域でご飯を食べたりできるのは、ちょっとした楽しみですね(笑)。
入社したばかりの頃は、お客様を前にして「何を話したらいいんだろう」と思っていたのに、今は一人でいろいろな地域へ行き、多くのお客様を担当している。そう考えると、自分でも変わったなと思います。

この仕事の一番面白いところは、どこですか?

いろいろな経営者の方と話ができることですね。
私たちは税務に関わる仕事をしていますが、実際にお客様から相談されるのは、税金のことだけではありません。
特に法人のお客様の場合は規模も大きく、従業員を雇っているところもあります。
そうすると、労務の話だったり、経営の話だったり、「ほかの農家と比べてうちはどうなんだろう」と聞かれたり。
税務の範囲を超えた相談を受けることも多いです。
私たちは多くの農業者の方と関わっているので、その蓄積を活かしてお話しできることもあります。そこは、農業分野のお客様を多く支援している会社だからこその強みだと思います。
そして、会社によって経営の仕方も違えば、経営者の考え方も違う。
同じ農業でも、一軒一軒、本当に違うんですよね。
普段生活していたら、これだけたくさんの経営者と深く話す機会って、なかなかないと思います。
転職しているわけではないのに、いろいろな会社の中に少しずつ入らせてもらっているような感覚。仕事の話だけではなく、関係が深くなれば、人生について話を聞かせてもらうこともあります。
私より年上のお客様が多いので、人生の先輩でもあるんです。
こちらが相談に乗っているはずなのに、逆に勉強させてもらうこともたくさんあります。
そこは、この仕事ならではの面白さだと思います。

「この仕事をやっていてよかった」と感じるのは、どんな瞬間ですか?

やっぱり、頼ってもらえた時ですね。
最近、お客様から「担当が変わらないならいいけど」と言っていただいたりすることがあります。
そういう言葉は素直に嬉しいです。
この仕事って、数字だけを見ていればできる仕事ではないと思っています。
同じ内容を伝えるにしても、このお客様にはどう説明したら分かりやすいのか。今、何に困っているのか。どういうことを考えているのか。
相手を知っていかないと、本当に必要な提案はできません。
最初はお客様との話し方さえ分からずでしたが、そこから少しずつ経験を積んで、「石黒さんに聞こう」と思ってもらえるようになりました。頼ってもらえることが、この仕事の一番のやりがいなのかなと思います。

これから、どんなことに挑戦していきたいですか?

これからは自分ができるようになるだけではなく、後輩に教えたり、チームを見たりする立場にもなっていかなければいけないと思っています。マネジメントについても学んでいきたいですね。
そして、もう一つ。
お客様が何か新しいことに挑戦しようとしている時に、それを支えられる存在になりたいです。
税務の仕事をしていると、もちろんルールがあります。
でも、「税務上こうだから、それはできません」で終わるのではなくて、「こういう方法ならできるんじゃないですか」と提案できる人でありたい。
お客様がやりたいことを実現するために、一緒に方法を考えていく。
そんな仕事ができたらいいなと思っています。
お客様の挑戦が、自分の挑戦になる。
これからは、そんな働き方をしていきたいです。

最後に、これから一緒に働く人へメッセージをお願いします。

私自身、最初から税務の知識があったわけでも、会社員としての経験があったわけでもありません。
農業経験についても、実は社内では私の方が珍しいくらいで、農業とはまったく違う業界から入っている人もたくさんいます。
だから、最初から全部を知っている必要はないと思います。
ただ、分からないことがあった時に、自分で調べてみること。
待っているだけではなく、自分から知ろうとする姿勢は、この仕事では大切だと思います。
あとは、人と話すことが好きな人。
もっと言えば、自分がたくさん話したい人というより、人の話を聞くことが好きな人には向いている仕事かもしれません。
お客様が何に悩んでいるのか。
これから何をしたいのか。
その話を聞いて、一緒に考えて、必要な提案をする。
仕事をしていく中では大変なこともありますし、決して楽なことばかりではありません。
でも、普段ならなかなか出会えない経営者の方々と関わり、その人の仕事や人生の話まで聞かせてもらえる。そして、頼ってもらえるようになる過程で、自分自身も成長していける。
そこが、この仕事の面白さです。
私も「何も分からない」ところから始まりました。
だからこそ、少しでも興味があるなら、まずは飛び込んでみてもいいんじゃないかなと思います。

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