税理士
平尾 祐輔
挑戦する人を会計で支えたいと思った。
税理士を目指したのは、どんなきっかけだったのですか?
最初から、税理士になりたいと思っていたわけではないんです。
学生の頃、周りには起業する人や、自分のやりたいことに向かって頑張っている人が結構いました。
そういう人たちを見て、すごいなと思っていて、でも、自分には特にやりたいことがなくて。ただ、自分のできることをやっているような感覚だったんです。
そこには、コンプレックスもありましたね。
一方で、会計に興味を持って勉強するうちに、会計はどんな会社にも必要なものだと分かってきました。
それなら、自分がすごいなと思っている人たちを、会計の面から支えられるかもしれない。
自分で何かを始める人や、やりたいことに向かって進んでいる人の力になれるんじゃないかと思ったんです。
税理士は、そのための一つの手段でした。
大学は北海道大学の農学部で、農業経済を専攻していました。その後は大学院で会計を学び
卒業後は一般企業で経理や総務を約2年経験して、それから東京の税理士法人で約8年働き、北海道の農業特化の会計事務所に転職しました。
東京で働いていたところから、なぜ農業に関わる会計事務所へ転職したのですか?
きっかけは、転職サービスを通じてスカウトが届いたことでした。
その時は、積極的に転職しようと思っていたわけではありませんが、転職サイトに登録だけはしていて。そんな時に、農業特化の会計事務所からオファーをもらって、ふと「もともと、自分は何をやりたかったんだっけ」と思ったんです。
学生の頃、農業も会計も学んでいた自分としては農業特化の会計の仕事こそが自分のやりたかったことだったのでは?と気づきました。社会に出て仕事をしているうちに、そのことをしばらく忘れていたような感覚です。
こうしてそのオファーを受け、学生の時になんとなく思い描いていたことと、仕事がつながった感じでした。
札幌の事務所に入って1年働き、その後は個人事業として業務委託で関わっていました。
そこから今回、新しい法人を立ち上げる話があり、菊池さんと一緒に取り組むことになりました。

今は、具体的にどんな仕事をしているのですか?
日々の仕事では、お客様の帳簿を確認して、気になるところがあればお聞きしたり、必要な資料をいただいたりしています。
お客様との面談では、今年の所得がどのくらいになりそうか、何か特別な動きがあるかといったことも伺います。
そうしたやり取りを重ねながら、年末調整や確定申告に向けて準備していくのが、基本的な流れです。
税理士として、最終的な内容のチェックもしますし、新しい税制について調べて、事務所の中で共有することもあります。
税務って、何でもはっきり白黒がつくわけではないんですよね。
判断が難しいものについて、事務所としてどういう考え方で進めるかを整理することも、自分の役割だと思っています。
今は、新しい法人を立ち上げるための仕事も加わっています。実際、そちらにかなり時間を使っていますね(笑)。
農業の知識についても、私自身、今も勉強中です。
農学部で学んではいますが、学問としての知識と、現場で必要になる知識は違います。
仕事をしながら、覚えていくことはたくさんあります。
農業のお客様と関わる中で、どんなところに面白さを感じていますか?
経営者と直接話せることは、大きいと思います。
東京で働いていた頃は、企業の経理担当の方とやり取りをすることが多く、毎月の会計や決算、税務申告を間違いなく進めることが仕事の中心でした。
もちろん税務相談もありましたが、経営そのものに直接関わっているという感覚は、今ほどありませんでした。
農業のお客様の場合は、経営者ご本人と話すことがほとんどです。
だから、経営についての話が、かなり直接的なんですよね。
気さくな方も多いので、お話ししていて楽しいです。
それに、仕事の流れは毎年同じでも、お客様に起きることは毎年違います。
お子さんが生まれたとか、仕事だけではなく、そういったプライベートのお話を聞かせていただくこともあります。
私たちは経営の数字を知っていますし、ご家族のことも伺っています。
その関係の中で、会計以外のことまで話していただける。
一人のお客様のことを、そこまで深く知って関われる仕事は、なかなかないと思います。

お客様を支えるうえで、特に大切にしていることはありますか?
経営の判断って、正解がないことも多いと思うんです。
でも、経営者は悩みながら、その都度決めていかなければいけません。
だから私は、ご本人が納得して判断できたかどうかが、とても大事だと感じています。
そのために、まず数字の面からサポートする。
ただ、数字だけ見れば納得できるかというと、それだけでは足りないこともあります。
経営者の頭の中にある考えを、一緒に整理することも必要なんですよね。
お金がどう動いているのか。これから何をやりたいのか。
その両方を見えるようにして、改めて考えていただく。そういう支援をしていきたいと思っています。
例えば、節税の話でも、税金が減ったからよかった、とは限りません。
税金は減ったけれど、手元のお金もなくなってしまった、ということもあります。
今期はよくても、翌期に影響が出ることもある。
そのあたりまで説明して、分かっていただくことが大切だと思っています。
事業承継も、同じように早めに考えることが必要です。
お子さんに引き継ぐ以外にも、法人化して第三者に引き継ぐなど、選択肢はいろいろあります。
ただ、直前になって相談されても、できることは限られてしまうんですよね。
普段の面談の中で、将来どうしていきたいのかを少しずつ話す。そうすることで、考えるきっかけをつくれたらと思います。
こうした支援には、お客様と向き合う時間が必要です。
まずは日々の会計業務を効率よく進められるようにして、その先の相談や支援に時間を使えるようにしていきたいですね。
個人で働く経験もしたうえで、もう一度、組織で働こうと思ったのはなぜですか?
個人で仕事をしていた時は、時間の自由がありました。
自分でスケジュールを組めますし、誰かの許可を取る必要もありません。
子どもがいるので、迎えに行ったり、熱が出た時に休んだりしやすかったのは、よかったところです。
そういう柔軟さは、これからこの法人でも大切にしていきたいと思っている部分です。
でも、個人でやってみて分かったこともありました。
自由はあるんですけど、仕事をしていて面白いなと思うのは、みんなとやっている時のほうだったんです。
一緒に取り組むことで、できることも大きくなりますから。
もちろん、組織になると大変なことも増えます。
人や会社のことなど、今まで考えなかったことも、たくさん考えなければいけません。
ただ、それは自分がお客様である経営者に近づく経験でもあると思っています。

最後に、これから入社する人へ伝えたいことは?
会計事務所というと、ずっとパソコンに向かって数字を入力しているイメージがあるかもしれません。
最初は、そうした仕事から慣れてもらうこともあります。
お客様の書類や帳簿を何件も見ていくことで、その地域の農業や、会計処理の特徴が分かってくるからです。
それが、お客様と話すための下地にもなります。
お客様のところへ行く時も、まずは先輩と一緒に話を聞くところから始めます。
ただ、どこまで勉強すれば完璧になる、というものでもありません。
知識を入れるだけでは分からないこともありますし、自分でやってみて、初めて気づくこともあります。
お客様にご迷惑がかからないよう、こちらもフォローしながら、経験できる機会をつくっていきたいと思っています。
だから、今の時点で経験があるかどうかだけではなく、その先の仕事に興味を持てるかどうかだと思うんです。
お客様と話すことが好きだったり、人の考えを聞くことに面白さを感じたりする方には、挑戦してもらいたいですね。
私自身、会計を通じて、頑張っている人たちを支えたいと思ってこの仕事を選びました。
これからは、仲間と一緒にできることを増やしながら、お客様が納得して次の一歩を決められるような支援をしていきたい。
その思いを共有して、一緒に会社をつくっていける方と働けたら嬉しいです。